甲南大学フロンティアサイエンス学部

2012/11/24 Sat (No.907)

 神戸のポートアイランドは、先端科学技術の集積地になっています。バイオケミカル、バイオメディカルの大学、研究所、企業が寄り集まっています。また高速大規模科学技術計算をあつかえる京コンピュータもポートアイランドにあります。

 先日、ポートアイランドに立地する甲南大学のフロンティアサイエンス学部を見学に行ってきました。いままでの学部組織とは構成を異にする研究体制をとっています。すなわち早い課程から「専門家」の養成に重点がおかれています。普通の理科系の大学であれば、1年次と2年次前半までは一般教養に重点を置き、そののち専門教育が開始される。3年次で基礎的専門教育をおえ、4年次で卒業研究に取り掛かることになります。しかし、ようやく自分の研究テーマが決まり、研究に油がのりはじめるころ、就職活動に精力を吸い取られてしまいます。フロンティアサイエンス学部では、1年次から専門教育をはじめ、一般教養については2年と3年で履修するよう計画されています。「専門教育」を主眼に置いた結果といえます。辛口の視点でいえば、大学の「専門学校」化。企業の即戦力となる人材の養成も視野に入っていると思います。技術と知識の修得には、合理的で合目的的な手法だと思います。

 大学がどのような人材を育成するべきかについては、多くの意見があるでしょう。一般教養の土台の上に、専門教育が可能になるという見解は、戦後の総合大学の理念でもあります。南原繁は、「大学の再建」のなかで、「近代科学と人間性をその分裂から救い、大学をその本来の精神に復すにはいかにすべきであるか。それにはまず、この科学や技術が人間社会に適用される前に、相互に関連せしめて、その意義をもっと総合的な立場に立って理解することである。」と述べています。人文科学や社会科学との関連を欠いた自然科学は目的そのものを合理化する盲目の科学になる危険性も有しています。とくに生命科学における先端技術は、倫理的なものへの考察を抜きにしては語ることができません。

 高校を卒業しただけでは、驚くほど知識がありません。社会観や人生観といった生き方の根本にかかわる智がありません。専門知識より前に一般知識の土台がほしいと思います。わたしたち高校の教師からすれば、大学で専門教育を行うことはもとより、受験勉強のようなつめこみではなく、将来にわたってのバックボーンとなるような一般教養(allgemeine Bildung, general education)の教育も重視してほしいと思うのです。
関連記事

コメント

Secret



プロフィール

進路ルーム

Author:進路ルーム
京都の大学で大学・大学院と8年間を過ごし、高校の教師となりました。文系ですが、コンピュータ大好き人間。人間(生徒)に倦むと機械(コンピュータ)が恋しくなり、機械に倦むと人間が恋しくなります。

ブログ内検索
カテゴリ
今まで訪問された方
最新記事
月別アーカイブ
RSSリンクの表示