学級間格差と授業アンケート

2012/08/26 Sun (No.813)

 それでは、同じ高校では、より公平な評価ができるかといえば、そうではありません。クラス間格差が存在するからです。高校では、選択科目をもとにクラス編成をおこないます。そうすると選択科目の違いによって学力の低い生徒、意欲の低い生徒が集まるクラスが自然と生まれてきます。その逆に学力や意欲の高い生徒が集まるクラスもあります。高いレベルの大学進学を狙うクラスでは教科・科目に関心は高いですが、専門学校で満足するクラスでは学習意欲は低くなります。そのため同じ教師が同じ授業をしても、反応はまったく違ってきます。騒がしく投げやりなクラスでは、授業に集中させることは難しいですが、生徒が身を乗り出して聞いてくれるようなクラスでは、授業は楽しくやりがいがあります。当然、この二つのクラスでは、同じ教師に対しても評価は違ったものとなります。

 評価によって給与などの待遇が異なるとしたら、みずからすすんで、学力の低いクラスや問題行動を起こす生徒のいるクラスを受け持とうとする教師は少なくなります。受け持てば評価が低くなるに決まっているクラスは、誰が担当するのか。クラス編成は、新学年が始まる以前に決定しており、あらかじめそのクラスの担当から外れる画策もできます。そして、問題クラスは、ババ抜きのババのように、非常勤講師に押し付け、新任教師に押し付けることも可能です。かくして問題クラスはますます荒れていきます。もしこのようなことが頻繁に起こったら、それこそ教育の崩壊です。

 もちろん、教師はまじめで誠実な人がほとんどです。功利的観点だけで行動する人はごく少数です。ですから上に述べたようなことは、実際には起こらないと思っています。しかし、「授業内容に興味関心を持つことができ」「授業を受けて、知識や技術が身に付いたと感じ」ることを、給与や人事をともなう評価の対象とするのなら、「授業内容に興味関心を持つことができず」「授業を受けて、知識や技術が身に付くことを必要としない」クラスでの授業を避けようとするのは、人間だれしも持つ感情です。

 とつとつと話をする先生、雄弁に語りかける先生、受けないギャグを連発する先生、脱線してなかなか本題に進まない先生、難しい話ばかりしている先生、保護者のみなさんの高校時代にはいろいろな先生がいたはずです。授業が下手であっても、生徒から慕われ、魅力のある先生はたくさんいます。教師は優れて人間的職業なのです。ティーチングマシーンではありません。そうであるなら、どこかの予備校のカリスマ講師のサテライト授業を視聴することが、最も優れた教育となります。
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コメント

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予想する未来が来ないことを祈ります。

Andyさん、コメントありがとうございます。

おっしゃるような状況が、現実のものとなれば、恐いですね。生徒におもねって生徒の好きな分野、生徒の好きな話題しか授業しない先生が出てくることは当然予想されます。

以前にもコメントいただいたように思いますが、いつもながら、鋭いご指摘どうもありがとうございます。

進路ルーム

未来予想図

202X年,大阪府立△◆□高校において。

「だって,そうするしかないでしょう!」
かつては数学オリンピックの生徒も指導していた数学科の三上先生は告白した。
「でも,あんまりじゃないですか。本当に絶対値も三角比も教えなかったんですか。」
教頭の小川はあきれてしまった。
「保護者からの密告は本当だったのですね。」
三上は黙ってうなずいた。
「全部あのアンケートのせいなんだ。」

前年度まで,三上の授業は完璧だった。
数学の苦手な生徒にもなんとか二次関数,絶対値の概念,三角関数やベクトルがわかるように日夜工夫していた。

「三上先生ねえ。熱心な授業もほどほどにしてもらえませんか?我々の授業が何か熱心でないように見えかねませんからねえ。もっと普通にやって下さいよ。」
同僚の数学教師=山崎の話はその時は気にならなかった。

しかし,生徒のアンケート内容を知り,三上は愕然とした。
【前年の三上先生のアンケート結果】
非常に満足0% 満足3% 不満58% 非常に不満24% その他15%

不満+非常に不満が50%を越え,非常に不満が20%を越えると,減給10%。
これが3年間続くと普通科高校での教員から配置転換が必至。

「私には妻も子供もいて,これ以上給料が減るとローンも返済できません。同じ学年を教えていた山崎先生のアンケート結果を見て決心してしまいました。もう難しい内容を工夫して教えるのはやめようと。」
三上は肩をふるわせて言った。
「だって,そうするしかないでしょう!山崎先生のアンケート結果って非常に満足が62%,満足が31%ですよ。高校で学ぶ新しい内容は言葉だけふれて,誰でも解ける簡単な問題しか扱わず,半分以上雑談している授業がですよ。それで生徒にお菓子を配って満足するって書いてもらってるんですよ。」



プロフィール

進路ルーム

Author:進路ルーム
京都の大学で大学・大学院と8年間を過ごし、高校の教師となりました。文系ですが、コンピュータ大好き人間。人間(生徒)に倦むと機械(コンピュータ)が恋しくなり、機械に倦むと人間が恋しくなります。

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