国立民族学博物館

2011/11/03 Thu (No.508)

 数年ぶりに国立民族学博物館に行ってきました。特別展の「アイヌのくらし」を見るためです。アイヌ文化については、民族学博物館は数年ごとに何らかの特別展を開催しています。しかし、残念なことに、今年の「アイヌのくらし」展は、わたしにとってあまり面白くはありませんでした。

 特別展の入場券で常設展も入場できます。というわけで常設展ものぞいて来ました。これも数年ぶりです。以前の国立民族学博物館の展示は、先住民族や固有の民族の文化の紹介が中心で、それぞれの民族の住居や移動手段、生活用品に展示の焦点があてられていました。それはそれで大変興味あるものなのですが、ひとつの独立した系として自己完結的な世界を展示したものが多く、たとえば典型的なポリネシアの住居であるとか、イヌイットのイグルーであるとか、モンゴルのゲルであるとか、それぞれの文化に特徴的なものをとらえて、わたしたちにとっての異質の未知の世界を紹介する役割を多くになってきたように感じます。それは生態学的展示を標榜しながらも、たとえば、動物園で象なら象だけ、ライオンならライオンだけを展示していたのに似ているかもしれません。

 ところが、今回入館して感じたことは、民族の文化は自己完結の系の中には存在せず、絶えず異文化にさらされ、対立・受容し、そして変遷していくものあるという立場に基づいた展示が増加しているということです。オセアニア展示では、先住民族とヨーロッパ人との出会いのなかで何か生まれてきたか、アメリカ展示では、新大陸農耕文化がどのように旧大陸に伝播したか、またその逆にキリスト教がどのようにシャーマニズムと融合していったか、などの展示が新鮮でした。同じことは、アフリカ展示においても、かつては多くの民族固有の仮面を展示してあった場所に、カリフォルニアカット、東京カットなどを看板にしている床屋、西欧のリビングを背景として写真を撮影する写真屋、など文化がクロスオーバーしながら発達しているようすが展示されています。

 ただアジア展示においては、またそこまでの進展が見られません。展示を新しくするには、学術博物館なので、大変な労力と時間と研究が必要なのだと思います。しかし、東南アジアや南アジアそして中国、韓国の独自の固有文化とともに、それが西洋や日本との接触においてどのように変わってきたのか、このことを実証的に理解させてくる展示が実現される日をわたしはひそかに待っています。
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Author:進路ルーム
京都の大学で大学・大学院と8年間を過ごし、高校の教師となりました。文系ですが、コンピュータ大好き人間。人間(生徒)に倦むと機械(コンピュータ)が恋しくなり、機械に倦むと人間が恋しくなります。

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