パウル・クレー(おわらないアトリエ)

2011/03/27 Sun (No.284)

 パウル・クレー展に行ってきました。クレーは、スイスのベルン生まれの画家で、ドイツとスイスで活躍しました。水彩で描かれたものが多く、日本人好みの作品をのこしています。京都国立近代美術館での開催です。

 クレーの絵はずいぶん昔、カンデンスキーの作品と一緒にみたことがあります。今回は、「おわらないアトリエ」という副題がついており、クレーのアトリエでの制作過程に焦点を当てた展示となっています。アトリエそのものの写真もあります。わたしは、それまで作品そのものしか見たことがなかったので、知らなかったのですが、クレーは、記録魔で、自分が制作した作品のリストを作り、その作品の素材や制作方法を克明に記録にのこしています。そして、作品の左下に小さく1914/73など制作年と作品番号、Ansicht von Kairuanなど作品のタイトルを記しています。今回の展示は、作品の「制作プロセス」を知ることのできる大変興味深いものでした。

 クレーの独自の技法として、「油彩転写(Ölpause)」というのがあります。「油彩転写」というのは、まず鉛筆などで素描を描きます。そして、別の紙一面に黒の油絵の具を塗り、ある程度乾かしてから、作品となる紙の上に絵の具を塗った面をかぶせてのせ、その上に最初の素描をおいて、鉄筆でなぞります。こうすることによってカーボン紙で複写したように作品となる紙の上に素描が転写されます。その上から、水彩で色を付けていきます。このタイプの絵のところどころに、カーボンでこすったような汚れがあるのは、なぜかと思っていたのですが、転写する際にこすれてできたものだったのです。それが、作品に素朴な効果を与えています。クレーは、整理が得意だったのでしょう。素描を描いた数年後に、作品に仕上げている例がいくつも見られました。「油彩転写」の制作過程についてのビデオもあり、おもしろく見ることができました。

 クレーは、管理のために自分の作品を8つのカテゴリーに分けます。そしてそれらのいずれのカテゴリーにも属さない自分のためだけの「特別クラス(Sonderklasse)」の作品も制作しています。この中には、クレーの制作の指標となっていったものが多く含まれています。展示の一番最後はこの「特別クラス」の作品群です。「山のカーニバル」、「ブルンのモザイク」、「荘重な発芽」、「教会」などの幻想的で抽象的な作品群がわたしには、とくに印象に残りました。
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Author:進路ルーム
京都の大学で大学・大学院と8年間を過ごし、高校の教師となりました。文系ですが、コンピュータ大好き人間。人間(生徒)に倦むと機械(コンピュータ)が恋しくなり、機械に倦むと人間が恋しくなります。

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