大阪の教育の先にあるもの

2011/03/06 Sun (No.262)

 公教育とはエリート教育のことを指すのでしょうか。現在の知事になって以来、教育が競争の原理によってゆがめられ、「成績を残すか残さないか」という「あめとむち」を突きつけられながら、教育をおこなうようになっています。しかし皆さんもご承知のように、勉強は不得意だが、やさしく誰にでも公平に接することのできる生徒もいれば、学力はピカイチだが、エゴイスティックで自分の利害に関わることしか関心のない生徒もいます。前者の生徒にすこしでも勉強することの楽しさを教え、後者の生徒に人と協力することの楽しさを教える、それが公教育ではないでしょうか。

 学校どうしを競わせ、成績のよい学校には予算を潤沢に配分し、競争に敗れた学校からは予算を削減するという、橋下知事の政策は非常に危険です。あなたが高校生の保護者であったとして、あなたの子どもは数学や英語に秀でていますか。数学ができなければ、英語ができなければ、あなたの子どもの学校の予算が削られ、学校がだんだん荒廃していってもそれを仕方がないことだと思いますか。

 英語については、この4月から24校をイングリッシュフロンティアハイスクールに指定するための競争が始まっています。イングリッシュフロンティアハイスクールに指定され、TOEICやTOEFLで優秀な成績をのこすと学校に予算が上乗せされます。しかし、TOEICやTOEFLで高い得点をあげることが、どれほどのものなのでしょう。それにかかわる生徒は、全生徒のわずかな割合に過ぎません。英語が読めないから、喋れないからといって、その生徒の価値が低いとは、私は到底思いません。

 確かにできる人、できない人いろいろいます。その中で今現実に持っているそれぞれの生徒の能力を、少しずつ引き上げることが重要ではないでしょうか。人との競争ではありません。大事なことは、自分との競争であり、自分自身の達成感なのです。「どうせ俺らなんて、でけへんのやから、ほっといて」と言う生徒たちを「ほっとかず」自立できるような環境を整えていくために費用をかけることが教育です。

 アメリカでは、すでに教育に競争が持ち込まれています。その結果、教師は疲弊し、学校は荒廃し、保護者と教師との信頼感は希薄になっていっています。橋下知事があとを追おうとしている、アメリカの教育がどのようなものであるか。みなさんが高校生なら、ぜひ、堤未果『社会の真実の見つけかた』(岩波ジュニア新書2011年)を読んでみてください。また一般の方なら、同じく、堤未果『ルポ貧困大国アメリカ』(岩波新書2009年)、『ルポ貧困大国アメリカ2』(岩波新書2010年)もあわせて読んでみてください。この中で一番読みやすいのは、『社会の真実の見つけかた』です。
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Author:進路ルーム
京都の大学で大学・大学院と8年間を過ごし、高校の教師となりました。文系ですが、コンピュータ大好き人間。人間(生徒)に倦むと機械(コンピュータ)が恋しくなり、機械に倦むと人間が恋しくなります。

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