公教育のめざすもの

2011/01/04 Tue (No.200)

 先の朝日新聞の世論調査のなかで、「将来のリーダーを育てるために能力の優れた子どもを選別して特別な教育を受けさせるべきだという意見」に賛成が36%、反対が56%ありました。また子どもたちの将来を考えたとき、「競争に勝てば豊かになれるが、格差の大きい社会」を望むものが22%、そうではなくて、「豊かになれる機会は少ないが、格差の小さい社会」を望むものが67%いました。以上の結果から多くのひとが、英才教育を望んでいないことが分かります。

 この世論とは逆に、「エリート教育」を目指すのが大阪府の橋下知事です。旧9学区のトップ校である北野・天王寺・三国丘・茨木・四条畷・高津・大手前・生野・岸和田と二番手校の豊中を加えた10校を「進学指導特色校」として、「エリート教育」をおこない毎年2億円を10校に支給するというものです。各校のホームページをご覧になればわかると思いますが、上記の10校には現在でも大阪のトップレベルの生徒が集まっています。クラブ活動も盛んですし、同窓会の援助でいち早くクーラーが設置されたのもこれらの高校です。学力の高い生徒たちは、家庭で十分な教育投資を受けることができます。みずから予備校や英会話学校に通うこともできます。私立高校ならいざ知らず、府民の税金をこれらのエリート校に重点的につぎ込むのが公教育の目指すところでしょうか。

 その一方で大阪府の高校生の1割以上の生徒が「今の生活がつらい」と答えています。九九ができない、アルファベットが読めない高校生がいます。人生でほめられた経験がなく、「大人」や「教師」は敵だと考えています。15歳にしてかれらは人生からすでに降りてしまっています。このような生徒たちを引き上げ、社会的生活を送ることができるようにするのが、公教育のもっと大事な目的です。それには多大な手間と時間と資本がかかります。「トップ校」ではなく、「底辺校」にこそ少人数教育が必要です。すぐにキレる生徒たちをなだめ、成功体験を味合わせ、キャリア教育も含めて、根気強く指導できる教師を数多く配置しなければなりません。現状の「底辺校」では、とてもそこまで手が回らない状態なのです。

 生徒を社会的な学力のないまま社会に放り出し、やがてはフリーターとなり生活保護を受けるようになる。そのことこそ費用的にみても人的にみても社会の損失となります。「豊かになれる機会は少ないが、格差の小さい社会」を望むものが多いというのは、セーフティネットの不十分な日本では全体の底上げが必要だと感じる人が多いからではないでしょうか。
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Author:進路ルーム
京都の大学で大学・大学院と8年間を過ごし、高校の教師となりました。文系ですが、コンピュータ大好き人間。人間(生徒)に倦むと機械(コンピュータ)が恋しくなり、機械に倦むと人間が恋しくなります。

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