大学全入時代の問題点

2010/12/19 Sun (No.184)

 JSコーポレーションでは、高校の進路指導部の教員を対象に毎年アンケート調査を行っています。2007年度は公私立440高校から回答が寄せられました。その調査項目に「全入時代における大学進学指導での不安に感じる点」というものがあり、自由記述で回答できるようになっています。箇条書きでの多くの回答があるのですが、その中からわたしなりにまとめたものが以下の文章です。「」のなかは、回答からの引用ですが、回答の選択や文章のつながりは、わたし自身によるものです。したがってわたし自身の考えもその中に紛れ込んでいます。(出典 「高校進路指導部調査」JSコーポレーション 2007年11月)

 まず生徒に関しては、「あまり学習しなくても( 学力が低くても) 大学が入りやすくなってきており」「基礎学力のないまま進学してしまう点」が問題であるとの回答が多く、目的意識も希薄で、「目的がなくても、なんとなく大学に入れてしまう」ため「自分に力をつけないと将来社会で仕事ができないことがわかっていない生徒が多い」と感じています。大学選択も、「『行きたいところ』ではなく『行けるところ』に行く生徒がふえた」結果「入学後真剣に頑張ってくれるだろうか」という心配を抱いています。また、「生徒が安易に指定校に行きたがり、当初第1希望にあげていた大学も、他校に合格が決まれば受験すらしなくなってしまうケースも少なくない」との回答もあります。わたしも全く同じような見解を持っています。

 大学に対する注文としては、最近の学部・学科の再編・細分化に関して「学部・学科が細分化されていく一方で、教育内容、取得可能な資格が類以もしくは同一」であったり、「学部・学科の改編・新設が相次ぎ、名称だけでは、学ぶ内容やその後の進路へのつながりがわかりにくくなっている」という意見があります。教育内容も、「大学に入った学生の期待に応えて、『ここで学べてよかった』と思えるような教育内容」があるのか、「大学・短大が専門学校化し、資格や専門性を追求するあまり、教養教育が弱体化している」のではないかという指摘があります。また就職に関して、「大学の先生(教授)がどこまで学生に親身」になり「4年先を見据えた指導をしてくれるのか」「大学卒業後の進路先( 就職先) が本当に満足した企業などに就けているか」の不安も抱えています。そのほか「大学の教授たちの学生像と現実の学生とのギャップが広がっていて、学力レベルや学ぶことへの意識が低い生徒たちが入学することへの対応がどのように行われているか」も心配事項です。大学経営についても、「定員割れをする学校が多いと聞いているが、生徒が入学後、その学校が存続できるかどうか? 経営状態が不安な学校もあるだろうし、そのことを、生徒や保護者にきちんと説明」できているかの悩みもみられます。

 また大学全入時代といっても「難関大学は相変わらず競争率も高く」合格のためには勉強が必要なのに、「『大学全入』という言葉を誤解し、『二極化』の状況を知らない生徒や保護者も多」く「向上心の強い生徒とそうでない生徒とのギャップが広がって」いる事も問題です。まさしくその通りで、関西でも難関校は相変わらず人気が高く、中堅校との間に溝が広がってきています。

 そのほか保護者についても、「自分の価値観のみで生徒の意欲・学力などを考えていない保護者」の存在や「子供の受験のプレッシャーに耐えきれず、安易に推薦に逃げてしまう」保護者もみられるとの回答もあります。
関連記事

コメント

Secret



プロフィール

進路ルーム

Author:進路ルーム
京都の大学で大学・大学院と8年間を過ごし、高校の教師となりました。文系ですが、コンピュータ大好き人間。人間(生徒)に倦むと機械(コンピュータ)が恋しくなり、機械に倦むと人間が恋しくなります。

ブログ内検索
カテゴリ
今まで訪問された方
最新記事
月別アーカイブ
RSSリンクの表示