教育は共に未来を語ること

2010/12/05 Sun (No.170)

 先日、代々木ゼミナール主催の第2回大学入試研究会が、ヒルトンホテルで開催されました。はじめに代々木ゼミナール副理事長の挨拶があったのですが、挨拶に立ったのはなんと30歳そこそこの人物でした。このひとは、「SAPIX」、「Y-SAPIX」とよばれる難関中学、難関高校、難関大学を受験する超エリートのための塾を展開しており、抜群の合格実績をあげているそうです。若いにもかかわらず、副理事長の地位を占めているのは、受験指導に対して卓越した力量を持っているからなのでしょうが、いかにも能力主義の「代々木ゼミナール」との印象を受けました。エリートと非エリートとの二極分化のなかで、能力のある小・中・高校生が費用と時間をかけて超難関校にいどむのは当然であり、それを支援するのは絶対善であるとの考えが挨拶の言葉の端々からにおっいてました。

 副理事長は、はじめに数字を挙げます。ことしの10月1日の時点で大学生の就職決定率は6割を切っていますが、3割以上の学生が就職未決定である大学は、国立大学で4.5%、公立大学で7.7%であるのに対し、私立大学では27.9%にのぼり、その私立大学のうち7割が1950年以降の設立だというのです。また就職未決定者の割合を大学規模でみると(1学年)200人以下の小規模大学が38.3%をしめ、2000人以上の大学の15.4%と比べたとき、規模が小さい大学ほど就職で苦戦しているとのことです。ですから、規模の大きい国立大学を目指すことは当然で、超難関大学に入学することは、人生の特急券を手に入れることだという風に拝聴いたしました。もちろん、このような印象は、副理事長よりおそらく2回りは年上の、風采の上がらない一教師であるわたしのひがみが多分にはいっていることでしょうが。
 
 その一方で、「就職超氷河期」の今年、就職に苦労している高校もたくさんあります。先の府立体育会館で催された合同求人説明会で、「まだ50人近く就職未定者がいる」と嘆いていた、ある高校の就職担当者の顔が目に浮かびます。不況の影響は、弱いものへ弱いものへと向かいます。とくに定時制高校がひどい状況です。12月3日の朝日新聞夕刊によると、藤井寺工科高校定時制では22人の就職希望者のうち就職内定をもらったのはまだ3人にすぎません。また10月1日での全国平均の就職内定率が4割なのに対し、兵庫県の定時制・通信制高校での内定率は3割にも満たないとのことです。家計を支えながら学ぶ真面目な生徒でさえ、就職できないのです。

 全日制の生徒によって定時制の生徒がはじき出され、大学生によって高校生がはじき出され、有名大学によって中堅大学がはじき出され、旧帝大によって有名大学がはじき出され、と連鎖はとどまるところを知りません。

 教育はけっして強者をつくるためにあるのではありません。教育がないために甘受せざるをえない不幸な境遇をなくし、社会的不平等を是正するための手段なのです。教育によって人間らしさを獲得し、差別されたり、虐げられたりすることのない社会をつくることが近代の大衆教育の目的ではなかったのでしょうか。「教育(教える)とは共に未来を語ること」というように、ともに未来を語りうる社会の到来を願います。

 「SAPIX」「Y-SAPIX」の超エリート主義から始まって、今日は、どうも青臭いことを書いてしまいました。

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進路ルーム

Author:進路ルーム
京都の大学で大学・大学院と8年間を過ごし、高校の教師となりました。文系ですが、コンピュータ大好き人間。人間(生徒)に倦むと機械(コンピュータ)が恋しくなり、機械に倦むと人間が恋しくなります。

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