北海道大学「総合入試」

2010/11/17 Wed (No.148)

 2011年度の北海道大学の入学試験に「総合入試」が導入されます。「総合入試」というのは、学部の枠を取り払って、「文系」・「理系」のおおくくり枠で募集をおこなうものです。

 今でも北海道大学では、学部を問わず、入学してから3セメスター(1年半)の間、高等教育機能開発総合センターで基礎科目や教養科目の授業を受けることになっています。そしてそののち各学部での専門教育が始まります。Allgemeinbildung(一般教養) とFachausbildung(専門教育)の区分けがきちんとなされており、かつての大学教育の理念を継承しています。学生の一年間の履修単位数に上限を設けるなど、大学らしい大学を標榜しているように思えます。

 来年実施される「『総合入試』では、まず文系や理系の総合入試枠で受験し、本人の希望と1年次の成績によって学部に移行するシステムです。入学後の1年間は、全員が『総合教育部』に所属し、幅広く教養科目や基礎科目を学びます」(総合入試案内・北海道大学アドミッションセンター)。文系では、前期、後期とも学部別入試がありますが、理、工、薬、農の各学部では、前期入試は「総合入試」のみで実施され、学部別入試は後期入試で補完的に実施されるにすぎません。

 高校では、現代文・古文・漢文・歴史・地理・政経・倫理・数学・物理・化学・生物・地学・英語など基本的な知識教育はおこなわれますが、大学での専門教育についてのオリエンテーリングはおこなっていません。そのため、学力のある生徒でも、各学部・学科で何を勉強するかの知識は驚くほど浅いものがあります。大学名のブランドで受験大学を選び、入学後どんなことをしたいのかのビジョンが希薄な生徒が数多くいます。そのため学部での勉強と自分の希望との違いから、やがて大学に出席しなくなる卒業生もみられます。諸星裕著『大学破綻 合併、身売り、倒産の内幕』(角川oneテーマ21、2010年)によると、かつてアメリカでは入学してからの学部選択のミスマッチが数多くあり、制度変革の結果、現在では70%の学生が入学後1-2年の後に自分の専門分野を変更していくそうです。その点「総合入試」は、入学後にさまざまな基礎科目を学ぶことにより、自己の希望と適性にあった学部・学科を選び取ることを可能にしているといえます。

 また、大学に入学した学生は、それまでの受験勉強から解放された安堵感に満ちあふれ高校3年生の時のようには勉強をしなくなります。入学したら、思い切り羽根を伸ばそうという思いでいっぱいです。しかし、大学1年間の成績によって学部が決定されるなら、学生は遊んでいるいとまはありません。AllgemeinbildungをおこないながらFachstudiumへと結びつけていくという連携が、この学部・学科決定方式によって、より容易になると考えられます。

 2011年の入試改革のゆくえを見守っていきたいと思います。
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Author:進路ルーム
京都の大学で大学・大学院と8年間を過ごし、高校の教師となりました。文系ですが、コンピュータ大好き人間。人間(生徒)に倦むと機械(コンピュータ)が恋しくなり、機械に倦むと人間が恋しくなります。

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