大学進学のメリット

2010/11/01 Mon (No.133)

 『日本の教育格差』(岩波新書2010年)を著した橘木俊詔は、今後大学進学率は、現在の50%前後で推移すると考えています。『学歴分断社会』(ちくま新書2009年)を著した吉川徹も同じ考えです。

 橘木は、大学への進学率を引き下げる要因として、大学を卒業しても「エリート」として待遇されないなら、なんとしても大学をめざす必要がないこと、最近の大不況のなかで、大卒の就職も厳しい状況がつづいており、大学で学ぶより、専門学校で、技術・技能を習得した方が合理的だと考えられること、の二つをあげています。逆に進学率を引き上げる要因として、高卒の就職事情も悪化しているため、大学や短大にモラトリアムとして避難している状況をあげます。これらを相殺した結果、大学進学率は50%で推移すると考えているのです。

 そして、学歴格差を、①名門ないしブランド大学を卒業したもの、②普通の大学を卒業したもの、③高校を卒業したものの三種類からなる三極化としてとらえています。橘木は、②の普通の大学を卒業したものは能力として③の高校を卒業したものときわめて近く、待遇や賃金も高卒なみということをいいたいのだと思います。

 わたしは、橘木とはすこし考えを異にします。②の普通の大学を卒業したものの能力や学力は③の高校を卒業したものとはきわめて近いとしても、ふつうの大学を卒業したものでも、就職の機会や将来の待遇・賃金については高卒で就職する場合とは比べものにならないほど恵まれています。いかに優秀な高等学校を卒業しても、高卒で就職する場合、就職できる企業は一握りしかありません。なぜなら、優秀な高校ほど就職する人数が少ないので、企業からの求人が少ないからです。また大企業からの求人がたまたまあったとしても、職種は大卒の求人とは異なります。現業の仕事が多くマネジメントの仕事はありません。わたしの勤めている高校にも「大阪ガス」からの指定校求人がありましたが、職種は「保守点検」でした。高卒での就職は、最初から大学卒とは別の路線を歩み、待遇も給料も違った基準が適応されるのです。どんな企業でも大卒と高卒との初任給には差があります。そしてこの経済対効果により、高い学費を払っても三流大学に進学する人口は今後も上昇するだろうと考えています。わたしは、大学進学率は、一昨日のブログでお示ししたように60%~65%に達すると考えています。
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Author:進路ルーム
京都の大学で大学・大学院と8年間を過ごし、高校の教師となりました。文系ですが、コンピュータ大好き人間。人間(生徒)に倦むと機械(コンピュータ)が恋しくなり、機械に倦むと人間が恋しくなります。

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