一段と難しくなった看護専門学校

2012/11/30 Fri (No.913)

 看護専門学校の推薦入試の結果が発表される頃となってきましたが、今年も大変倍率の高い難しい入試となっています。合格するだろうと自信を持って送り出した生徒が不合格だったりするので、生徒も担当の先生も次の対策を考えるのに苦慮します。

 わたしの高校では、今年の傾向として、評定平均値のすこぶる高い生徒たちがはやばやと指定校推薦で看護専門学校に応募していきました。その時は一般入試でもっとふさわしい学校があるだろうと思ったりしたのですが、今年の推薦入試結果を見るにつけ、生徒たちの選択は正しかったようにも感じます。

 推薦入試で不合格であった皆さんにもまだ一般入試があります。昨年、推薦に落ちて同一校の一般入試に合格した例もあります。看護専門学校にはいろいろな難易度の学校があります。必ず合格できる学校がありますので、落ち込むことなく勉強を続けていって下さい。
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西大和学園の大学新設計画

2012/11/29 Thu (No.912)

 関西に看護学科をもつ短期大学は3校しかありません。すなわち藍野学院短期大学青葉丘校(第二看護学科)、大阪信愛女学院短期大学(看護学科)、白鳳女子短期大学(総合人間学科看護学専攻)の3校です。

 このなかでも、白鳳女子短期大学では、3年課程修了ののち併設する1年課程の専攻科があり、助産師、保健師、養護教諭の資格を取ることが可能です。また学士の学位を取得することもできます。この点で大学志向の短期大学だといえます。

 先日、母体の西大和学園から、2014年度開学を目指して「大和大学」を設置するという案内がありました。教育学部と保健医療学部の設置ですから、白鳳女子短期大学を引き継ぐものだと思われます。ただ立地は白鳳女子短期大学から離れ、大阪の吹田市となるので、奈良の短期大学が募集停止になるかどうかは分かりません。

 昨年は教員の経歴に問題があった「日本国際大学」の新設が認可されず、また今年11月はじめの大学認可騒動があったあとなので、「大和大学」もそれなりの準備はしていることと思います。看護系の学部・学科の設立ブームで、今年4月からは摂南大学と佛教大学とに看護学部(看護学科)ができています。
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定員割れを解消するために

2012/11/28 Wed (No.911)

 昨日お話したとおり、大阪では来春もおそらく私立高校への進学率が高まり、公立高校への進学率が低下すると思われます。公立と私立では試験の時期が違うので、早い者勝ちの競争です。一見、教育の公私間の自由競争のように見えますが、不公平な競争に感じます。また本来は府が担うべき公教育の衰退という大きな問題をはらんでいます。公立有名進学校だけを重視する教育政策が公教育の本質とは思えません。大阪府の財政が破綻して私学無償化が困難になったとき、少なくなった公立高校がそれを支えられるのでしょうか。

 また7:3比率がなくなったからといって、私立高校がやみくもに募集定員を増やすことにも不安を感じます。ハード面やソフト面で教育の質の低下を招いていないでしょうか。教室の増設だけでなく図書館や体育館といった共通スペースの拡充は追いついているのでしょうか。正規教員の加配や職員の手配はできているのでしょうか。わたしは私立高校の教師ではありませんので、私立高校の現状はよくわかりません。反論も含めて、私立高校関係者からのコメントをいただけたらと思います。

 私立高校の経営者にとっては、生徒数の増加は経済的効果をもたらします。大阪府からの私立高校への補助金も、生徒人数による頭割り(パーヘッド)で支給されますので、生徒人数が多いほうが経営は楽になります。私立高校にとって経営的には大規模校のほうが有利なのです。

 このまま公立高校の定員割れが続くようなら、公立高校の1クラスあたりの人数を減少させたり、クラス数を減少させたりすることも必要でしょう。1クラスあたり30人にすれば、担任や教科担当の目も届きやすく、もっと充実した教育が可能です。またクラス数を減らして、数学や英語などで少人数展開をすれば、つまずいている生徒達も勉強の楽しさが分かることになるでしょう。
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府立高校から私立高校へ

2012/11/27 Tue (No.910)

 2011年度大阪府立高校の入試で41校の全日制の公立高校が定員割れをしたのを受けて、今年は公立高校全体で少し募集人数を減らしました。それでも昼間の高校で18校が定員を充足できませんでした。その分はどこに行ったのか。次のグラフをご覧ください。(出典 「府立高校の再編整備について」大阪府)

私立高校受け入れ

 すぐにお分かりのとおり、2011年の私立高校無償化以来、私立高校の専願が増えるとともに、私立高校進学者が増えたのです。おそらくこの傾向は2013年度の私立高校の募集定員増加の決定によってさらに加速されると思います。受験時期の関係で、私立高校と同じスタートラインに立てない公立高校にとってまだまだ受難は続きます。
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オープンキャンパスに参加してよかった点

2012/11/26 Mon (No.909)

 オープンキャンパスや進学説明会の季節はすでに終わりましたが、JSコーポレーションから「オープンキャンパス・説明会に参加して良かったと思う点」についてのアンケート結果が送られてきました。下のグラフをご覧ください。(出典 「オープンキャンパス・説明会に参加して良かったと思う点」進路データ No.480 JSコーポレーション)

オープンキャンパス

 「学部・学科・コースの内容説明」や「キャンパスや周辺環境の雰囲気」、「校舎・施設・設備が充実」などが上位に来るのは理解できます。わたしの高校では、大学のオープンキャンパスでも講義の受講や在学生との会話を勧めていますので、上のグラフと比べて、「授業・講義・実習などの体験」や「在校生との応対」がもっと上位に来ると考えています。

 JSコーポーレーションの同様のアンケートは昨年も実施されていますが、アンケート項目が違うのか、昨年とは結果が少し異なってきています。
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新しい大学教育の試み

2012/11/25 Sun (No.908)

 新しい大学の試みとして、先の甲南大学のように早くから特定の分野の専門教育を重視する方法と、はじめは専門教育にとらわれずさまざまな領域の学問分野をのぞいた上で学部や学科を決定する方法、とがあると思います。

 学問領域の深化によって、専門教育も時間がかかるものとなってきています。おそらく学部4年間では一般教養も履修すると、専門知識の修得には時間が足らないのだろうと思います。しかし、私立大学では経済的負担もあり、できるだけ4年間でスペシャリストを養成しなければならないのでしょう。それが、甲南大学が専門教育重視のカリキュラムを採用する学部を設立したことともつながるのでしょうか。実際に見学したところ、異なる電子顕微鏡3台や磁気共鳴装置、多くの実験装置などの優れた設備、学生と教師のあいだが近い研究室など教育環境は整っています。

 一方で、最近の国公立大学では、専門分野にとらわれず学際的な教育を重視するところが増えてきています。たとえば金沢大学や大阪府立大学で行われている学域・学類制度は、従来の学部・学科を越えた幅広い知識の修得を可能にしています。また北海道大学の総合入試の形態は、そもそも学部選択は教養課程を修了してからとなります。国公立大学では、大学院進学率が高く、大学院進学を前提に6年間で専門教育をおこなうことができます。

 私立大学理系に6年間在籍すると授業料だけで900万円、国公立大学では320万円と学費の差も大学院進学率の差となります。
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甲南大学フロンティアサイエンス学部

2012/11/24 Sat (No.907)

 神戸のポートアイランドは、先端科学技術の集積地になっています。バイオケミカル、バイオメディカルの大学、研究所、企業が寄り集まっています。また高速大規模科学技術計算をあつかえる京コンピュータもポートアイランドにあります。

 先日、ポートアイランドに立地する甲南大学のフロンティアサイエンス学部を見学に行ってきました。いままでの学部組織とは構成を異にする研究体制をとっています。すなわち早い課程から「専門家」の養成に重点がおかれています。普通の理科系の大学であれば、1年次と2年次前半までは一般教養に重点を置き、そののち専門教育が開始される。3年次で基礎的専門教育をおえ、4年次で卒業研究に取り掛かることになります。しかし、ようやく自分の研究テーマが決まり、研究に油がのりはじめるころ、就職活動に精力を吸い取られてしまいます。フロンティアサイエンス学部では、1年次から専門教育をはじめ、一般教養については2年と3年で履修するよう計画されています。「専門教育」を主眼に置いた結果といえます。辛口の視点でいえば、大学の「専門学校」化。企業の即戦力となる人材の養成も視野に入っていると思います。技術と知識の修得には、合理的で合目的的な手法だと思います。

 大学がどのような人材を育成するべきかについては、多くの意見があるでしょう。一般教養の土台の上に、専門教育が可能になるという見解は、戦後の総合大学の理念でもあります。南原繁は、「大学の再建」のなかで、「近代科学と人間性をその分裂から救い、大学をその本来の精神に復すにはいかにすべきであるか。それにはまず、この科学や技術が人間社会に適用される前に、相互に関連せしめて、その意義をもっと総合的な立場に立って理解することである。」と述べています。人文科学や社会科学との関連を欠いた自然科学は目的そのものを合理化する盲目の科学になる危険性も有しています。とくに生命科学における先端技術は、倫理的なものへの考察を抜きにしては語ることができません。

 高校を卒業しただけでは、驚くほど知識がありません。社会観や人生観といった生き方の根本にかかわる智がありません。専門知識より前に一般知識の土台がほしいと思います。わたしたち高校の教師からすれば、大学で専門教育を行うことはもとより、受験勉強のようなつめこみではなく、将来にわたってのバックボーンとなるような一般教養(allgemeine Bildung, general education)の教育も重視してほしいと思うのです。
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プロフィール

Author:進路ルーム
京都の大学で大学・大学院と8年間を過ごし、高校の教師となりました。文系ですが、コンピュータ大好き人間。人間(生徒)に倦むと機械(コンピュータ)が恋しくなり、機械に倦むと人間が恋しくなります。

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