文楽協会への補助金の拒否

2012/06/30 Sat (No.756)

 「大阪市の橋下徹市長は29日、公益財団法人『文楽協会』(同市中央区)への補助金について、予算ヒアリングのため申し入れた面会を人間国宝に拒否されたとして、『特権意識にまみれた今の文楽界を守る必要はない』と述べ、全額カットする意向を表明した(毎日jp6月29日)」そうです。「特権意識にまみれた」という常套手段の相手を卑下する枕詞を付加することによって人々のうけをねらっています。また市長は文楽協会に「恐ろしい集団」だというというレッテルを貼っています。そして議会に計上された、昨年度と比べて25%減となった補助金も、たとえ議会で可決されても執行しない方針とのことです。

 まるでダダっ子です。「特権意識にまみれた市長である私に会わないというような団体を守る必要はない」というのが本音でしょう。文楽は大阪が誇る優れた芸術です。文楽の維持は大変です。技芸員の養成ももちろんですが、人形の維持にも多くの費用がかかります。かしらを操る糸(鯨のひげ)も入手できなくなっています。三味線(太棹)の修理にも費用がかかります。補助金の3900万円といえば、市長が新たに公募した区長3人分の年収より下回ります。自分の意に染むことには費用を惜しまず、少しでも意に染まなければ切り捨てるということなのでしょうか。

 わたしは橋下市長が文楽を見たことがあるかどうかは知りません。「大衆文化が特権になってしまった。こういうところに衰退の原因がある」などと述べていますが、朝日座で文楽公演を行っていた昭和の終わりころと比べて、現在のほうがずっと活気があります。あのころは竹本津大夫や竹本越路大夫といった大名人が活躍していましたが、劇場は現在よりも閑散としていました。

 いまの国立文楽劇場の資料展示室では、演目に関連した人形やかしら、実際に使用されている床本などが展示されています。ボランティアの解説員も常駐しています。また床本を見なければ理解できないような語りも、舞台上部に電光掲示されるようになりました。いまだに観客は年配の婦人が中心ですが、学生や若いカップルも散見されます。

 文楽の人気がないというより、おそらく多くの方が文楽をご覧になったことがないのだろうと思います。もしご覧になれば大阪の人間であれば、言葉がわかるので、世話物の人情や時代物の大仰さ、そして何よりもチャリ場の滑稽さには笑い転げることだと思います。文楽を振興させようと望むのなら、補助金をカットするのではなく、むしろ補助金を増額してでも、高校生や大学生など若い人たちの文楽鑑賞の機会を増やしていくことが必要なのだと思います。

 文楽の7月公演は、親子で楽しめる「西遊記」を中心にした第1部、凄惨な場面もありますが、若い人が見てもわかりやすい「伊勢音頭恋寝刃」をふくむ第2部、「お紺さん、お紺さん」で始まるチャリ場も十分楽しめます。そして、文楽といったらこれ、「曽根崎心中」の第3部の3部構成です。料金も一般が4600円のところ、高校生以下1800円、学生2300円とお得になっています。7月21日から8月7日まで日本橋の国立文楽劇場での公演です。
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7-9月の入試スケジュール

2012/06/29 Fri (No.751)

 各私立大学から「入試要項」がつぎつぎと進路指導部に送られてきます。またAO入試を実施する国公立大学からも「AO入試要項」が送られてきています。7月から9月にかけての入試スケジュールをおさらいしてみましょう。(出典 「大学入試カレンダー」旺文社蛍雪時代付録)

7-9月
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立命館大学2012年入試のまとめ

2012/06/28 Thu (No.755)

 立命館大学の2012年一般試験結果概要が送られてきています。2012年の入試は、昨年比112.5%となり、関西8大学のなかでは最も志願者の増加率が高かった大学です。同様に昨年度より志願者増となった同志社大学が理系で受験者を集めたのに対し、立命館は文系でも、理系でも受験者が増加しています。とりわけ志願者を集めたのは経営学部で対前年比137.6%となっています。

 立命館大学の一般入試にはいろいろな方式があり、またAO入試も実施されますので、その全容を把握するのが難しいところがあります。2013年度にもいくつかの入試方式の名称が変更になります。また少しずつAO入試と特別入試の定員を削減し、その分を一般入試に加えていっています。

 立命館大学の特徴として、全国から受験生を集めている点が上げられます。たとえば近畿圏の志願者割合が、関西学院大学では73.0%であるのに対し、立命館大学では、45.8%と半数を割り込みます。立命館大学が31都市で試験会場を設けていることと、学生の街、京都に立地していることが近畿以外の受験生の志望率を高めているのだろうと思います。
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大阪府立高校前期入試小論文の内容

2012/06/27 Wed (No.754)

 前期入試では、学力検査以外に小論文や情報活用力検査、面接などが実施されますが、その内容についてお知らせします。(出典 昨日と同じ)

前期小論

 ただし、この情報からだとAでは、「小論文」のテーマを具体的に各学校が設定していいのか、所与のテーマから選択するのかも不明ですし、「情報活用力検査」もその内容がかなり漠然としています。中学3年生のなかには、かえって不安を抱くものがいるのではないでしょうか。
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2013年度大阪府立高校後期入試配点

2012/06/26 Tue (No.753)

 今日は、後期入試の配点についてお知らせします。これも昨年までと大きく変更になりました。全日制普通科では、学力検査が5教科とも70点、計350点となります。調査書も5教科がそれぞれ30点、実技教科がそれぞれ50点で計350点と学力検査と同じ配点になります。そのうえで高校ごとに、学力検査と調査書の比率が6:4、5:5、4:6のうちから決定されます。(出典 昨日と同じ)

後期配点

 実は前期入試、後期入試を通じて変更されたことは配点だけではありません。いままで、男女比率が55:45(45:55)までと決まっていたのに対し、2013年入試からはその枠が撤廃されます。今まで成績が上位であるにもかかわらず、性別によって入学できなかった受験生が救済されます。とはいえその結果、トップ校では男子比率が増加し、中堅校では女子比率が増加すると思われます。体育の授業やクラブ活動などに影響が及ぶのではないかと懸念します。
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2013年度大阪府立高校前期入試配点

2012/06/25 Mon (No.752)

 2013年度の大阪府の公立高校入試は大きく変わります。先日普通科全日制においても80名を前期募集できることをお話ししましたが、その前期募集での配点一覧表が府教委から発表されていますのでお知らせします。以前新聞の記事を載せましたが、このほうが見やすいと思います。(出典 府教委HP)

前期配点

 これを見ると昨年までばらばらだった調査書の扱いが、英数国が10点、それ以外が20点で計150点と整理されています。また学力検査の基本は各教科50点で黄色の網掛けのあるところの教科だけが100点となっています。明日は後期入試の配点についてお知らせします。
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応募前職場見学での質問

2012/06/24 Sun (No.750)

 応募前職場見学は、就職希望の高校生にとって、就職しようとする職場を知る大変よい機会です。しかし、数年前から必ずしも教師の引率を必要としなくなったので、見学した事業所から生徒への直接の質問も散見されるようです。大阪では、事業所から生徒への質問は基本的に許されていません。とくに採用につながるような質問や個人的な質問はできません。他府県では生徒の氏名を明示するところもありますが、大阪では職場見学に応募した生徒の名前も事業所には明らかにしません。

 今年の「応募前職場見学報告書」には、「あなた自身のことについて事業所から聞かれたことがあれば以下に記入してください」という欄が設けられ、1.名前を聞かれた(ア 保険加入のため イ セキュリティーのため ウ その他 ) 2.住居とその環境 3.家族の職業 4.家族の関係 5.保護者について 6.家庭の環境 7.男女雇用機会均等に関して 8.健康状態 9.志望動機 10.志望職種 その他 の項目について、質問されたことがあれば記入するようになっています。

 これらの中には、就職面接の際でも、明らかな違反質問が含まれており、生徒だけで職場見学に参加した時の違反質問を封じる.意味があると思います。
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プロフィール

Author:進路ルーム
京都の大学で大学・大学院と8年間を過ごし、高校の教師となりました。文系ですが、コンピュータ大好き人間。人間(生徒)に倦むと機械(コンピュータ)が恋しくなり、機械に倦むと人間が恋しくなります。

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