中堅の高校でも、アルバイトをしている生徒の率が非常に高いです。クラブにも参加せず、授業が終わると、すぐにアルバイト先に直行です。教室では、今月3万円稼いだとか、5万円稼いだとか、という声が聞こえます。家庭でもらっている小遣いの額よりは格段に多いので、それでスマホ代を捻出したり、服を買ったり、デートをしたりしています。お母さん方のなかにも、家でグウタラしているより、小遣いも稼げるし、何より社会勉強になるからとアルバイトを後押ししている場合もあります。
確かに小遣いが稼げるのは、生徒たちにとって大きな魅力です。でも一日3時間、週3日働いたとして、時給800円でひと月約3万円、確かに小遣いとしては十分です。しかし、そのために月40時間程度を消費しているのです。もしその40時間を、予習・復習に回すことができたら、あるいはクラブ活動に充てることができたらと思います。一日1時間の学習は、着実に学力を高めていきます。クラブに所属することは、他人と協力すること、一人では成し遂げられない達成感やときには挫折感を教えてくれます。ボランティア活動に参加すれば、地域との共生を経験することもできます。
アルバイトは社会勉強といいますが、社会勉強というのは、そのことによって自分自身が何らかの形で高められる場合を指すのであって、高校生がよくアルバイトしているスーパーのレジや飲食店のウエーター・ウエートレスでは得られるものは少ないと思います。スキルを磨くことのない、いわゆるマック・ジョブと呼ばれる仕事が高校生に求められている仕事なのです。
高校生の間は、高校生にしかできない経験をしてほしいと思うのです。
リクルート発行の「キャリアガイダンスNo.50」に一昨年紹介したアンケートの継続として「高校生と保護者の進路に関する意識調査」結果が載せられています。9都道府県の27の公立高校に在学する高校生2043人とその保護者1696人から回収されたアンケート結果です。アンケートの対象は高校2年生で、実施時期は進路を決めるにあたって大切な時期である9月下旬から10月末にかけてのものです。
今日は「高校の進路指導についてどんなことを要望するか」についての調査結果です。

高校の進路指導部としては、生徒や保護者に情報を提供しているつもりなのですが、それが十分に生徒に伝わっていないのだろうと感じます。
進路ガイダンスには、昨日紹介した高校に講師を招いて行う進路ガイダンスのほかに、梅田や難波で行われる「合同進学説明会」、バスで大学などに出かける「学校見学会」、大学主催の「オープンキャンパス」参加などがあります。
「合同進学説明会」にも難関大学主体のもの、専門学校主体のものなど、いろいろなものがあり、高校から無料送迎バスを出してくれる説明会もあります。「学校見学会」も学年の生徒全員を連れていく高校もあれば、希望者を募って引率する場合もあります。
進路ガイダンスをどのように組み合わせていくかを考えた時、わたしの高校では、1年生では職業理解と大学見学、2年生では学部・学科の説明会とオープンキャンパス参加、そして模擬授業、3年生では春に合同進学説明会と大学別説明会、オープンキャンパス参加という形をとっています。そして各学年で1回程度、進路講演会をとりいれています。
それぞれの高校によって、生徒の意識や希望も異なるので、どのような形がベストなのかはわかりませんが、わたしは、試行錯誤を重ねながら、多くのガイダンスを実施しようと思ってきました。
3学期が始まってから、何社かの進路ガイダンスを主宰する会社の担当者が、新年のあいさつと今年度のガイダンス計画を紹介するために訪問されました。
進路ガイダンスには、①将来の職業について説明する職業別ガイダンス、②学部学科で学べることを紹介する分野別ガイダンス、③それぞれの学校の特徴について説明する学校別ガイダンス、④大学での学習内容を体験する模擬授業、⑤講演会などがあります。これらのガイダンスは、高校に講師を招いて、普通教室や特別教室などで生徒の希望に沿って分科会形式で実施するのが一般的です。
上記のガイダンスをくみあわせて、高校3年間に、生徒各自がキャリアを形成していくために一番有効であると考えられる順序と方法で実施していくのも進路指導部の役割です。ガイダンスを主宰する会社によって、得意分野があり、大学説明会に強い会社、職業分野に秀でた会社などさまざまです。それらも勘案しながら、自分の高校に適した進路ガイダンス計画を作成していきます。
学校行事は前年度末に次年度の計画を完成させる必要があるので、これから2月下旬くらいまでの間に、多くのガイダンス会社がガイダンス案を売り込みに来るわけです。
保育士、幼稚園教諭を目指す生徒のなかで、ピアノが弾けないので進路をあきらめている生徒がいます。短大の入試にも音楽や体育実技のテストがあるところが多いです。それでは、保育所や幼稚園の採用試験でのピアノの能力はどれくらいの程度必要なのでしょうか。昨日と同じ、「教育・保育の仕事を目指す高校生に対する進路指導ガイドブック」に載っている情報を紹介します。
まず公立保育所では、各市町村で課題は異なるとはいえ、「バイエル70番以降」より3~5曲の課題曲が提示され、その中から1曲当日指定される場合が多いそうです。弾き歌いが必要なこともあります。私立保育所では、バイエル・ブルグミュラー25の練習曲程度の「自由曲」が課題とされる場合が多く、弾き歌いや初見演奏が必要なところもあります。
公立幼稚園では、教育委員会ごとに課題は異なります。保育所よりレベルは高くなり、「ブルグミュラー25の練習曲」「ソナチネアルバム」を課題として指定するところが多く、そのほかに初見演奏、初見視唱、リズム打ちが課される場合もあるそうです。私立幼稚園は園によりさまざまですが、一般的に「自由曲」とされる場合が多く、「ソナチネ以上、あるいはそれと同等の曲」が必要とされます。そのほかに、弾き歌い、音楽理論、リズム打ち、初見演奏、初見視唱が課される場合もあります。
常磐会学園大学から「教育・保育の仕事を目指す高校生に対する進路指導ガイドブック」というリーフレットが送られてきました。この中に、保育士、幼稚園教諭、小学校教諭の3つの資格についての違いが簡潔に述べられているので紹介したいと思います。
保育所の所轄は厚生労働省、幼稚園と小学校は文部科学省なのはご存じだと思います。
保育士の資格は、大学・短大などで必要単位を修得するか、学校に行かなくても合格率10数%の保育士試験に合格するかすれば、取得できます。幼稚園教諭と小学校教諭は短期大学で必要単位を修得すれば二種免許、大学で必要単位を修得すれば一種免許、さらに、専攻科か大学院で必要科目を修得すれば専修免許が与えられます。
就職難易度については、公立の施設・学校と私立の施設・学校とでは、難易度が異なります。公立保育所は、競争率が数倍から数十倍となります。これに対して私立保育所は、保育所数、乳幼児数の増加もあり、比較的採用されやすくなっています。
公立幼稚園が最も難しく、競争率は十倍から数十倍となります。幼稚園教諭免許以外に保育士資格や小学校教諭免許を求める教育委員会もあります。私立幼稚園は、比較的採用されやすい状況ですが、大学卒業生を採用するところも多くなっています。
小学校の99%は公立です。都道府県や政令指定都市が実施する教員採用試験に合格する必要がありますが、団塊世代の大量退職の時代以降、競争率は4倍台となっています。平成24年度実施の採用試験では、大阪府3.0倍、大阪市4.2倍、堺市3.9倍、奈良県3.7倍、京都市4.7倍、神戸市4.7倍となっています。まだ50代後半の教諭が多い状態が続いているので、今後もしばらくの間は比較的採用されやすい状態が続くと思われます。
3月になりました。雨の降る暖かい一日です。こうして一雨ごとに春が近づいてくるのでしょう。進路指導部でも2013年度の計画を立てなければなりません。今年は入試制度の変革により、進路の行事日程を確定するにも不透明な部分が多く、また前期入試・後期入試とあわただしく日が過ぎていくので、進路指導部で検討する時間もそれほど多くありません。
しかし、外部講師を招聘したり、大学見学会を開催したりするためには、遅くとも3月中には日程を確定しておかないと、優先的にお願いすることができません。生徒たちが小振りになっていくなか、モチベーションを高めるためのインセンティブとしての進路行事はどのようなものがよいのか、模索しているところです。
今年は、外部からの講師も積極的にお招きして、1年生の早い段階から「自分の進路」について考える機会を多く設けていきたいと思っています。