博士の就職難

2013/09/04 Wed (No.1195)

 ポスドクの就職難の記事が、新聞に載っていました。「学校基本調査(速報値)では、博士課程を終えた大学院生1万6440人のうち、就職者は5月1日現在で1万829人。就職率は65.9%で3年ぶりに下がった。『安定した職に就いていない人』は計6599人で全体の4割超」とでています。(出典 朝日新聞 9月4日 朝刊)

 理系の修士の場合は、学士より就職口が広いと思います。しかし、文系の修士・博士となると敬遠する企業も多いと考えられます。近年政策的に大学院の増設が続き、多くの修士・博士が誕生しましたが、それを吸収するだけの研究職の採用がありません。研究には、時間と費用がかかります。非常勤講師や塾講師を掛け持ちして、やっと生活している状態では、本来の自分の研究にかける時間も費用も捻出できません。

 わたしも30年以上も前に、大学院博士前期過程を終了して、オーバーマスターになるところ教員採用試験にひっかかって、何とか高校に職を得ることがでました。わたしの場合は、博士に進む能力がなかっただけですが、才能あるドクターが職につけないことは非常に遺憾に思います。

修士課程修了者の1/6が正規の職についていない

2012/09/21 Fri (No.840)

 昨日は、大学学部卒業者の就職状況を概観したので、今日は大学院修士課程修了者の就職状況についてみてみましょう。2012年に大学院の修士課程を修了した者は、78709人で、この数は学部卒業者559030人の14%にあたります。また学部卒業生ではその79%が私立大学卒業ですが、修士課程修了者では63%が国公立大学の修了です。

 修士課程修了者のうち、全体の就職率は73.2%で、そのうち「正規の職員等である者」は70.3%、「正規の職員等でない者」は3.1%となっています。

 「就職も進学もしなかった者」は13.0%で「一時的な職業に就いた者」、「正規の職員等でない者」を合わせた「正規の職」につけなかった者の割合は、修了者全体の17.6%となります。昨日、大学の学部卒業者の4人に1人が「正規の職」についていないことを紹介しましたが、大学院修士課程修了者では、6人に1人が「正規の職」についていないことになります。(出典 「学校基本調査速報」平成24年8月27日発表 文部科学省)。

 大学院に進学すると、就職口がないように思われる方が多いですが、修士課程修了者のほうが学部卒業生より就職率がよくなっています。

法学部の不人気

2011/11/14 Mon (No.519)

 わたしが学生だったころ、文系の人気学部は法学部と経済学部でした。どちらもいわゆる「つぶしのきく」学部で、ジェネラリストを求めていた企業にとって人材の供給源となっていました。石油危機を乗り切って日本が安定成長へと向かうころです。しかし、現在一番人気がないのがこの2つの学部です。とくに法学部の人気の凋落は著しいです。

 法学部といえば、法律家を養成する学部でもあります。法律家になるためには、法学部卒業後、2年間の法科大学院に進学し、その修了ののち司法試験を受けることになります。ところが法科大学院を修了してもなかなか司法試験に合格しないのです。

 2011年度の司法試験合格率は23.5%しかありません。しかも、合格者は難関大学の法科大学院出身者に集中しています。2011年度の司法試験で50人以上の合格者を出しているのは、東大、中央大、京大、慶大、早大、明大、一橋大、神戸大、同志社大、東北大の10校です。また合格率が30%を超えているのは、一橋大、京大、東大、慶大、神戸大、千葉大、中央大、早大、東北大、首都大、名大、岡山大、北大の13校です。易しい法科大学院に進学すると、10人に1人も司法試験に合格しません。

 しかも司法試験は、法科大学院修了後5年以内に3回しか受験することができません。3回以内に合格しないと受験資格を失うのです。

 というわけで、多額の授業料と長い勉強期間を費やしても、法曹への道はなかなか険しく、このことも法学部不人気の一因となっています。

山口大学大学院生の就職先

2011/09/18 Sun (No.460)

 山口大学大学院機械工学専攻,応用医工学系専攻の機械系学生の修士課程(博士前期課程)修了者の就職先はどうなっているでしょう。2009年の修士課程修了者60名の進路です。博士後期課程などに進学したものが5名あり、就職者は55名となっています。55名の就職先です。

 JFEメカニカル(株),TOTO(株),アイシン精機(株),キヤノン(株),スズキ(株),ダイハツ九州(株),ダイハツ工業(株),トヨタテクニカルディベロップメント(株)(3),トヨタ自動車(株),マツダ(株)(3),リョービ(株),愛三工業(株),宇部興産機械(株),(株)アマダ,(株)カネカ,(株)クボタ,(株)デンソー(2),(株)トプコン,(株)ニコン,(株)ユーシン精機,(株)神戸製鋼所,(株)村田製作所,(株)東芝,三井化学(株),三井金属鉱業(株),三井造船(株),三菱重工業(株)(2),三菱電機(株)(2),住友重機械工業(株),新日本造機(株),川崎重工業(株),大日本印刷(株),東ソー(株),凸版印刷(株),日揮(株),日本精工(株),日本電子(株),(株)マクニカ,(株)小松製作所,(株)常石造船カンパニー,三菱日立製鉄機械,富士重工業,竹中工務店

 ほとんど有名企業です。このように大学院まで含めて考えると、地方国立大学も相当の実力を持っていることががわかるでしょう。

大学院生の就職率

2011/09/14 Wed (No.458)

 今日は、大学院修了者の就職率を見てみましょう。資料もすべて「平成23年度学校基本調査の速報について」によります。まず修士課程修了者の就職率です。次のグラフをご覧ください。

修士就職率

 理系では、修士課程修了者の就職率が7割を超えるようになり、アルバイト・パートの率は1割を切るようになります。農学系・理学系では、博士課程に進学するものもまだ多く見られます。それに較べて文系では、就職率が低くなり、アルバイト・パートの率が上昇します。また人文科学系では、修士課程を修了した学生の2割近くが博士課程に進みます。

 では博士課程修了者の就職率はどうでしょうか。下のグラフをご覧ください。工学系では、まだ高い就職率を保っているものの他の専攻は、軒並み就職率が低下しています。博士課程まで進学するといわゆる「つぶし」が効かなくなるといった現象が見られます。

博士就職率

 以上のことからわかるように、就職率という観点から見ると、文系では学部卒で就職した場合が一番有利です。ただし就職先を丹念に探し、丁寧に就職活動をすることが必要です。理系学部では、修士課程を修了して就職するのが一番有利なようです。ただし、就職先の企業規模は小さくなりますが、学部卒で就職できないというわけではありません。また家政系、教育系においては、学部卒、修士課程修了にあまり違いは見られないようです。

大学専攻分野別大学院進学率

2011/09/13 Tue (No.457)

 大学院への進学率は、理、工、農の理系学部で高く、教育、家政および文系学部で低くなっています。また文系学部の大学院進学率が横ばいなのに対して、理学系、工学系では、リーマンショック以後、一段と高くなりました。(出典「平成23年度学校基本調査の速報について」文部科学省)

専攻別大学院進学率

 さらに大学院への進学率は、大学設置者によっても違いがあります。下のグラフに見られるように、国立大学が一番高く、公立大学、私立大学の順となります。(出典「平成23年度学校基本調査の速報について」文部科学省)
設立者別大学院進学率

 ですから、9月7日のブログで述べたように、大学院進学を視野に入れるのならば、地方大学であっても国公立大学進学を考えた方が得策です。とくに私立大学の学費が高い理系においては、6年間の学費の違いも大きなものとなります。

大学院進学率があらわすもの

2010/10/05 Tue (No.107)

 わたしが、大学院進学率を大学の判断材料の一つにするのは、大学で真面目に勉強している学生の割合をみるためです。大学院進学率は、理系の学部のほうが高いので、理系学部を持つ大学とそれを持たない大学とは、分けて考えなければなりません。(9/1710/3のブログを参照してください)

 大学の一般入試入学者の割合が、大学に入学する学生の資質をあらわすとしたら、大学院進学率は、大学での教育の内容をあらわすといえます。大学院に進学することは、研究者としてのスタートラインに着こうとすることです。大学が、学部の4年間に、そのための学識と向学心を学生に与えうる教育をしているというあかしです。大学が「レジャーランド」であれは、さらなる研究をしようとも思わないでしょうし、そうする能力も身に付きません。大学院進学率の高い大学では、一般学生に対しても、大学での授業の質がある程度保証されていると考えるからです。

 とはいえ、理系学部の修士課程をのぞいて、大学院に行くことは、茨の道を歩くことです。とくに文系学部の大学院卒は、一般企業への就職の道はほとんどありません。ポスドクやオーバードクターがごろごろしている現在、大学に職を見つけることは、才能と僥倖に恵まれたものだけに与えられています。残りのものは、非常勤講師として大学をかけもちするか、公務員になるか、わたしのように高校教師になるかの道しかありません。


プロフィール

Author:進路ルーム
京都の大学で大学・大学院と8年間を過ごし、高校の教師となりました。文系ですが、コンピュータ大好き人間。人間(生徒)に倦むと機械(コンピュータ)が恋しくなり、機械に倦むと人間が恋しくなります。

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